スペイン生ハムの両雄と言えば「ハモンセラーノ」と「ハモンイベリコ」。
レストランやスペインバルのメニューを見ると、「生ハム」の文字の隣に “スペイン産ハモンセラーノ” なんて書かれているのを見たことはありませんか?
こちらの記事ではスペイン産の生ハムを代表するハモンセラーノとハモンイベリコの違いについて深堀りしていきます。
ハモンセラーノ
スペイン語でJamón(ハモン)は「ハム」を意味し、Serrano(セラーノ)は「山地」を意味します。つまり、Jamón Serrano(ハモンセラーノ)とは『山脈で作られているハム』ということなのです。
スペインのアンダルシアやカスティーリャ地方など山岳地帯の山村で寒冷な空気の中、原料となる白豚は最低9ヶ月以上自然乾燥されることによって独特の風味を生み出します。
高品質なハモンセラーノの切り口はピンクがかった赤色をしており、肉は僅かに繊維質で比較的低脂肪です。脂身は黄色がかった白色で、香りが良く、非常に引き締まっていながらつやがあります。
その味わいはまさに「世界三大生ハム」の一角を為します。
一時期、その用語「セラーノ」は、材料となる豚の系統に関係なくスペインの土壌で作られるすべての生ハムを指しました。
しかし、現在では「セラーノ」という単語はスペイン国内のどこで生産されているかに関係なく、ほとんど白豚を原料とする生ハムだけに使われています。
ハモンイベリコ
もう一方のハモンイベリコは、イベリア半島の固有品種の黒豚であるイベリコ豚から作られる高級品。総じてハモンセラーノよりも小さめで、原木(脚)は細長い流線型をしています。融点が低く口に含むと甘く溶け出し、香りが素早く広がります。
また、A1などの和牛のランク付けがあるように、イベリコ豚にも「ベジョータ」や「セボ」などといったランクがあります。
最高ランクである『ベジョータ』はスペイン語で“ドングリ”という意味で、樫の実のドングリが実る秋から冬にかけて放牧され、ドングリをたっぷり食べて育ったイベリコ豚がベジョータとなります。
最長16ヶ月間の歳月をかけて生育するベジョータはイベリコ全体の約10%ほど。
ベジョータは「歩くオリーブ」と呼ばれるほど、その脂は身体によい不飽和脂肪酸であるオレイン酸を豊富に含んでいます。
脂の概念を覆すようなさっぱりとした旨味。溜息がもれるような、まろやかな甘み。
放牧して育てられるベジョータの引き締まった肉質ととろける脂のコントラストは絶品です。