生ハムの原木と言うとまるまる骨の付いた足一本を想像する方が多いと思います。 が、生ハム原木には用途によってさまざまな形態のものがございます。
そこで今回は豆知識! 専門店や業者でないと見かけない様々な形の生ハムについてご説明いたします。
生ハム形状いろいろ
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ボンレス
名前の通り、原木から骨を抜いたもの。既に骨が抜いてあるので、スライサーを使用したカットに向いています。
この形にするにはまず通常の原木に切れ目を入れ、骨と筋繊維を断ち切り、最後にえいっと骨だけ抜き出します。(例えるとお魚の開きをイメージしてください。お魚の開きのしっぽをつかみ、背骨をぺりぺりと剥がすようないイメージです)
しかし、骨を抜いた後は中の部分がどうしても空洞になります。そこでその箇所が空気に触れてしまわないよう、型に入れてぎゅっとプレスして空洞部分を結着させたのものがボンレス生ハムとなります。 -
骨付き
ご存じの通り、一般的に「原木」と呼ばれるもの。
豚の脚を塩漬け、吊るしてこの形のまま熟成させます。
脚の骨がそのまま残っているので、食べる際には主に手作業でカットしていきます。
スライサーを使う場合は、事前に骨抜き処理をする必要があります。 -
レガート(ボンレスの一種)
主にイタリアで見られる形状です。
前述のボンレスと同じように骨を抜いた後、一般的なボンレスは型に嵌めて機械で圧力をかけるのに対し、レガートは縄で縛ります。
通常のボンレスより圧力がかけられていない分、骨付きに近い柔らかな食感が楽しめます。一方で伝統的製法であり、その作業工程を人の手で行うためコストがかかること。また、圧力をかけないため結着はどうしても弱くなります。通常のボンレスより保管に気を使い、早めに消費しなくてはいけません。 -
マトネラ
四角いブロック状の生ハム原木です。生ハム原木から骨を抜いた後、外側の皮と脂を取り除きます。その後、長方形の型に入れてプレスし結着させます。
四角くコンパクトな形状になるので保存、輸送がしやすく、また既に外側の余分な脂や皮もないのでスライサーによるスライスに向いています。店頭で販売されているスライスパックの殆どはこのマトネラから製造されます。
ただやはり形を固定させるために圧力をかけるので身は締まってしまいます。 -
ブロック
生ハム原木を骨を抜いた後ブロック状にカットし、その状態で保管したもの。
一般家庭や小さなお店向けでも扱いやすい、当店でも人気の商品です。
冷蔵庫に入れて保管できるサイズで切りたての生ハムを味わえます。
一方であくまで生ハムの一部なので部位はランダム。生ハム原木の醍醐味である「部位の食べ比べ」のような楽しみ方は出来ません。
以上、4種類ご紹介いたしました。
もしこちらのコラムをご覧になっているうちに「うちの店の形態なら骨付きじゃなくてこっちがいいなかなぁ」と思われた店舗利用のお客様は、よろしければ「業務用会員ストア」で様々な形態の生ハム原木を販売しているので是非ご登録ください。
さて、ここまで4種類をご紹介する中で生ハムのカット方法に関する話も出てきました。
せっかくなのでそちらについてもご紹介させていただきます!
生ハムカットいろいろ
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手切り
※手切りには専用のナイフを使います。 手作業でのスライス。生ハム原木を薄くスライスするのは意外と難しく、美味しさを引き出す薄さとサイズにカットするには技術が必要。また、極めたプロは筋肉繊維などを考慮してくちどけを考えながらカットするとか。
スペインでは生ハムカット職人である「コルタドール」の資格試験があるほどです。 -
スライサー(手動)
※テラス席に飾られている手動スライサー ハンドルを使って手動で刃を回すスライサー。
全て金属で出来ているかなり操作は大変ですが、手切りでは難しい後ろが透き通るほどの薄切りを効率よくカットすることが出来ます。
また、電動のものより刃の回転速度が遅いため、摩擦熱が少ないので滑らかな食感に仕上がると言われています。 -
スライサー(電動)
※サルメリア(加工食品屋)の店頭に置かれた電動スライサー(写真右端) 電気式のスライサー。
生ハムを薄く、すばやく手軽にスライスすることが可能です。切りたての生ハムを素早く提供したい席数のあるレストランやスライスパックを作る工場などで使用されています。
フラッとイタリア料理屋やスペインバルに入ってもし生ハム原木が置いてあったら「当たりだ!」と皆様思われることでしょう。
一方で店頭に原木が置いていなくてもスライサーが置いてあるお店なら、そこも「当たり」の可能性大です。
生ハムスライサーは実はかなり気合の入った初期投資が必要な存在なのです。特に生ハムに最適化されたイタリアメーカーのものであればさらに…。
つまりスライサーを導入しているということはかなり気合を入れて、切りたての生ハムを提供するお店と言うこと。ぜひお店選びの参考にしてみてください!